COYOTE / 佐野元春
『COYOTE』ってタイトルを知った時、えらくドキドキしましたね。昨日も書いたんだけど、元春が…帰ってきた…そんな感じです。コヨーテって、小学校の時の図鑑の中のイメージしかないんだけど、知的で、攻撃的で、どこにも属さない…そんなイメージなんですね。元春に抱いてたイメージ…元春の音楽から感じてたイメージ…それは今までもずっと少なからず感じてはいたんだけど、今回、そんな攻撃的なイメージが…帰ってきたんですよ…
1曲目の「星の下 路の上」の音が鳴った途端、稲妻走りましたね。
なんなんですか…この疾走感はっ!若々しさはっ!
「アンジェリーナ」「BACK TO THE STREET」「悲しきRADIO」
初期の元春のR&Rが持ってた疾走感…いや、違うな…
あの頃からずっと走り続けてきた元春が、さらに加速した…
そんなスピードをこの曲から感じましたね…かっこいいよっ!
今回のミュージシャンは、俺、全然知らなかったんですよ。
NHKの『SONGS』や、TFMの『ミュージックフラッグ』を聴いて
若い頃に元春から影響を受けたミュージシャンだって知りました。
『僕らの音楽』のONE NIGHT STANDでも感じたんだけど、
『COYOTE』のセッションは、最高の化学反応を起したと思います。
元春のシャウトからも、そんなグッドバイブレーションを感じます。
俺が疾走感を感じたのは、サウンドだけじゃなくて言葉ですね。
いつだって元春は時代と対峙してきたと思うんだけど、
『COYOTE』で歌われている現代社会…そう“荒地”…
それは元春自身が“擦り傷だらけ”って言ってるけど、
ダブルワークをしなくちゃ暮らしていけない人達とか、
ネットカフェで寝泊りしなきゃ暮らせないコ達とか、
“この荒地の何処かで途方に暮れている”人達の声を、
元春がキャッチして、自分の傷みとして歌にしてる気がしました。
素晴らしいソングライターは、満身創痍なのかもしれないね…
「荒地の何処かで」「コヨーテ、海へ」は、
この12編の物語の核になってる気がしますね。
すごく“傷み”を感じるんだけど、それだけじゃないんだよね…
ポップミュージックにキッチリ昇華してるんだよね…
傷だらけでも下を向いてるだけじゃない力強さっていうのかな…
ラフで、タフで、したたかで、しなやかで…
そんな生命力を強く感じますね。
「君が気高い孤独なら」は、10年後、20年後も歌い継がれる
そんなエバーグリーンな名曲が生まれたと思いましたね。
「SOMEDAY」「約束の橋」がそうなように…00年代を代表する
卓越しポップチューンだと思いました。
気高い孤独…拙ない旅人…蒼い孤独…名もない孤独…
“毎日の猥雑なニュース”の陰で、国家権力が“個”を呑み込んで
しまおうとしているこの時代の、新しい“約束”…そんな歌ですね。
アルバムの中では地味な曲な気がするけど「呼吸」が好きですね。
こんな荒地のような時代だから、どんな時も君の味方だっていう
そんな友達が…すごくいいな…そう思いますね。
RCの「君が僕を知ってる」に似たタッチを感じましたねえ~。
アルバムの最後に歌われている「黄金色の天使」って、
こんな友達のことなんじゃないかな…そんな風に感じたりしてます。
今までも元春の新譜はリアルタイムで聴き続けてきたんだけど、
この感覚はね、はじめて『BACK TO THE STREET』とか、
『HEART BEAT』や『NO DAMAGE!』を聴いた時の感じに似てるな…
体中の細胞が覚醒するっていうか…そんなアルバムだと思います。
はやく、このアルバムを引っさげてのライブが観たいですっ!
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コメント
おおっ、さっそくコヨーテ・レポきましたね!
僕ね、このアルバム聴いてて、80年代後半に佐野さんが言った“僕はセンチメンタルよりもメランコリックを選ぶ”って言葉を思い出したました。
RE2Oさんも、ダブルワークとか、ネットカフェで寝泊りとか、具体的な記述をされてましたが、今回のアルバムは「THE SUN」よりも更に厳しい現状認識が感じられるよね。
満身創痍になりながら、憂鬱を抱えながらも、疾走しているイメージ。やっぱり佐野はロッカーだなあと思いました。ツアーが観たいですね。このバンドでライブハウスでやってくれたら言うことないんですが!
投稿: Y.HAGA | 2007年6月25日 (月) 12時04分
ラジオをつけたら偶然FMゆうべのひとときが佐野さん特集でした。もちろんコヨーテからも♪
投稿: 匹如身 | 2007年6月25日 (月) 18時53分
はじめまして。
素敵なレビューに元気が出ました。
斜に構えたリスナー(自称元春ファン:80年代至上主義者)
達は、このアルバムにがっかりしたり、今一だと言ってます。
僕はできるだけ柔らかく反論してみましたが、
不毛な気がして落ち込みました。
せっかく見つけた宝石に傷つけるくらいなら、
そっと海底に眠らせるべきなのに。
投稿: POP-ID | 2007年6月25日 (月) 20時07分
コメント&TB、サンキュ~。
「新しい“約束”」、確かにそうだね。アルバム全体を通して繰り返し「君」との約束、絆が歌われてて。
「呼吸」から「ラジオ・デイズ」への流れのとこで俺はいちばん強くそれを感じたなぁ。
いいアルバムでよかったよ。正直言うとさ、発売前に「荒地」とか「Coyote」とかのキーワードを目にしたとき、ちょっと心配になったんだよね。え?って。また?みたいなさ。よかったよ、余計な心配で。
投稿: j1/rockinchair | 2007年6月29日 (金) 01時23分
★j1くん
金子マリのアルバムで「ラジオ・デイズ」を聴いた時は、
どうしちゃったんだ…元春…って心配したんだよね。
でも、このアルバムで、しかもこの曲順で聴くと、
このナンバーの意志がビシビシ伝わってくる気がします。
ほんと…何度聴いても、いいアルバムだよねえ~。
投稿: RE2O | 2007年6月29日 (金) 06時02分