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2007年8月17日 (金)

出口のない海

Usrfpatqpp昨秋、公開された映画『出口のない海』のDVDを借りて観ました。太平洋戦争末期、日本軍の人間魚雷“回天”を描いた映画で、公開当時は特攻精神を美化する映画だって勝手に感じてですね、観ないまま1年近く経ったんですよねえ~。今度の日曜、8月19日21時からテレビ朝日系で放映するんで、ぜひ、みなさんにも観てほしいなあ~。ご覧になる方は、ネタバレアリなのでご注意くださいませ。

神風特攻隊に比べると、回天の知名度は低いですよね。
俺も名前は知ってたんですが、回天のことを強く意識したのは、
今年の7月7日、七夕の夜の、よしだよしこさんのライブでした。
詩人の石川逸子さんが書き下ろした歌も歌ったんですが、
石川さんはよしこさんに他に何篇もの詞を書いたそうです。
その中には、回天のことを書いた詞があったそうです。

石川さんは山口県にある回天の記念館を訪れ、
実際に回天の中に入ったそうです。
赤ん坊が胎内にいるような、かがまなければいられない、
そんな狭苦しい操縦席だったといいます。
よしこさんは「ちようど回天の映画が公開になりましたね」
と話してたんで『出口のない海』を思い出したんです。

『出口のない海』は、監督が佐々部清、脚本が山田洋二。
先日観た『夕凪の街 桜の国』も、佐々部監督作品でした。
すごく丁寧に撮られた、いい映画だと思います。
ただ、俺が引っかかったのが一箇所だけあったんです。
そこから、先に書きますね。

回天の故障で、九死に一生を得てしまった並木(市川海老蔵)が
整備士の伊藤(塩谷瞬)とキャッチボールをするシーン。
そこで並木は「なんのために回天で死ぬのか」を語るんです。
語られてる言葉は、本当…その通りだと思うんです。
でも、言葉にしなくても、あの映画の物語の中で、
並木の思いって、十分、観客には伝わると思うんだよね。
あそこだけ“つくられたシーン”って感じがしたんだよなあ…

俺が気になったのはそこだけで、後は素晴らしかったですよ。
海軍学校の生徒の並木達は回天搭乗を志願するんだけど、
あの時代の空気の中で苦悩して決断するのが伝わりましたね。
決断した後も、ずっとずっと苦悩してるんだよね。
それが、めちゃめちゃリアルに感じました。

この映画の中ではヒールな役回りの北中尉(伊勢谷友介)。
“軍神”になるために彼は回天を志願したんですが、
貧しい農家の出身の彼にとっては、家族が生きるために、
この道を選ぶしかなかった…そう追い込んだんだろうな…
先日聞いた北上の農民兵士の話しと重なりましたね。

俺がこの映画に入り込んだのは、回天を操縦できるようになる
過程の描き方が、すごく丁寧だったことですね。
今と違ってボタンひとつじゃないんですものね。
俺も並木同様文系の人間なんで、もし回天に載ることになったら、
まず、操縦訓練で脱落しちゃいますね。
あの過程の描き方が、これまでの戦争映画とは違って感じました。

そして一番の肝は、並木の最期です。
特攻の映画だと、主人公が敵にぶつかって玉砕するって、
普通、誰だって思うじゃないですか?でも、違ったんですよ。
並木は回天の故障で出撃せず、潜水艦は基地に帰ります。
そこで次の出撃に向けて訓練を行うんだけど、
並木はこの訓練の途中で亡くなってしまうんです。

糸井重里と吉本隆明の対談集『悪人正機』を思い出しました。
吉本さんは「戦争なんてドラマのようなんかじゃない。
大半は、飢え死にしたり、病気になって死ぬんだよ」
みたいなことを話してたんですけど、並木もそうでした。
特攻の映画で、特攻で死ねず、訓練の途中で死ぬんですから。

この場合、並木って戦死になるのかな…
特攻で死ねば何階級か特進になるんだろうけど…
太平洋戦争の日本の犠牲者は330万人、
非戦闘員の死者は110万人と言われているそうです。
戦闘員って言っても、赤紙で召集された学徒動員や農民兵士も
含んでるんですからね…

終戦までに訓練を受けた回天搭乗員は1,375人、
回天による戦没者は106人、整備士を含め145人だったそうです。
彼らや、並木のような事故で亡くなった人達、
そして複雑な思いを抱えたであろう生存者の方々の思い…
さまざまな思いを感じさせてくれる映画でした。

そうそう、この映画の主題歌は竹内まりやの「返信」で
『DENIM』に入ってるんで、何度も何度も聴いてるんですが、
歌詞に「夕凪」って出てくるんですよね。
今まで意識しないで聴いてたなあ…
みんなどんな思いで夕凪の海を眺めてたのかな…

さて、俺の夏休みの宿題は、もう一単元だな…

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コメント

「返信」が何かの映画に使われているってのは知ってたんですけど、これだったんですね。

また祖父の話で恐縮なんですが、当時祖父母には幼い2人の娘がいたんだけど、終戦直後に栄養失調で亡くなったそうなんです。これって、公には「戦死」扱いはされないんだろうけど…でもある意味立派な「戦死」ですよね。少なくとも、戦争の犠牲者であることに変わりはないはず。。

戦争にはこうした名もない、数にも数えられないような犠牲者が、たくさんいるんでしょうね。
「戦争なんてドラマのようなんかじゃない。」本当に、そのとおりだと思います。

投稿: ayako | 2007年8月17日 (金) 18時43分

★ayakoさん
そっかあ~…ayakoさんのおじさん、おばさんに
あたる人なのかな…
本当にたくさんの哀しいことがおきたんだよね…
昔は、8月に限って戦争をふりかえるのが
イヤだった頃もあるんですけど、今はわかる気がします。
あんなに暑かった夏が、嘘のような肌寒い朝です。

投稿: RE2O | 2007年8月18日 (土) 06時35分

数日前の新聞に、城山三郎さんの話が載っていました。米国の博物館で「桜花」という特効機を見たときの話です。着陸する車輪さえなく、あまりにもせまい操縦席のその特効機に、胸がしめつけられたと。若者がカラダを折り曲げ兵器の一部となって乗り込んでいく姿…トラブルがあって敵に体当たりできない状況になっても、二度と着陸することない機体…そこには人格も人命もなく、乗せた人達にとって乗る人達は消耗品だったと……そんな時代だったと痛感したそうです。
一年前だったか、「地球のステージ」というライブを見ました。医師の桑山さんが、紛争地域や貧困地域を回って医療活動をしながらフィルムを撮っていて、音楽とその映像と話を交えて帰国報告をするというものなんです。そこには、なぜ戦争がなくならないのかという現実が、たくさん映しだされていました。この「地球のステージ」は、全国でやっています。機会があったら出かけてみて下さい。

投稿: Silver girl | 2007年8月18日 (土) 08時00分

★Silver girlさん
特攻機は片道分の燃料しか積まないのは知ってましたが、
桜花は着陸する車輪すらないんですか…
ネットで桜花のこと探してみたんですが、つらいですね。
桜花で突っ込んだ人はもちろんだけど、
ズサンな兵器だってわかっていながら
この兵器をつくらざるをえなかった人達も含めて、
悲劇としか言いようがないつらさを感じます。

「地球のステージ」…山形の人達なんですね。
明後日は盛岡の近くでありますが、
残念ながら行けそうもありません。
すごくきめ細かい活動をしてるようなんで、
今度ぜひ行きたいと思います。

投稿: RE2O | 2007年8月19日 (日) 09時35分

RE2Oさん、この夏はずーっと熱心に宿題を掘り下げてるんですね。一連のエントリーを考えさせられながら読ませてもらってます。吉本さんの言葉も重みがありますね。『悪人正機』、読んでみようかなあ…。

投稿: Y.HAGA | 2007年8月20日 (月) 08時49分

★HAGAさん
今までも毎年8月が来てたんですけどね、
今年はなぜだかわかりませんが、こんな心持ちです。
『悪人正機』は里子に出してるんですが、
すご~く読みやすい本ですよ。ぜひっ!

投稿: RE2O | 2007年8月20日 (月) 22時09分

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