2007年8月17日 (金)

出口のない海

Usrfpatqpp昨秋、公開された映画『出口のない海』のDVDを借りて観ました。太平洋戦争末期、日本軍の人間魚雷“回天”を描いた映画で、公開当時は特攻精神を美化する映画だって勝手に感じてですね、観ないまま1年近く経ったんですよねえ~。今度の日曜、8月19日21時からテレビ朝日系で放映するんで、ぜひ、みなさんにも観てほしいなあ~。ご覧になる方は、ネタバレアリなのでご注意くださいませ。

神風特攻隊に比べると、回天の知名度は低いですよね。
俺も名前は知ってたんですが、回天のことを強く意識したのは、
今年の7月7日、七夕の夜の、よしだよしこさんのライブでした。
詩人の石川逸子さんが書き下ろした歌も歌ったんですが、
石川さんはよしこさんに他に何篇もの詞を書いたそうです。
その中には、回天のことを書いた詞があったそうです。

石川さんは山口県にある回天の記念館を訪れ、
実際に回天の中に入ったそうです。
赤ん坊が胎内にいるような、かがまなければいられない、
そんな狭苦しい操縦席だったといいます。
よしこさんは「ちようど回天の映画が公開になりましたね」
と話してたんで『出口のない海』を思い出したんです。

『出口のない海』は、監督が佐々部清、脚本が山田洋二。
先日観た『夕凪の街 桜の国』も、佐々部監督作品でした。
すごく丁寧に撮られた、いい映画だと思います。
ただ、俺が引っかかったのが一箇所だけあったんです。
そこから、先に書きますね。

回天の故障で、九死に一生を得てしまった並木(市川海老蔵)が
整備士の伊藤(塩谷瞬)とキャッチボールをするシーン。
そこで並木は「なんのために回天で死ぬのか」を語るんです。
語られてる言葉は、本当…その通りだと思うんです。
でも、言葉にしなくても、あの映画の物語の中で、
並木の思いって、十分、観客には伝わると思うんだよね。
あそこだけ“つくられたシーン”って感じがしたんだよなあ…

俺が気になったのはそこだけで、後は素晴らしかったですよ。
海軍学校の生徒の並木達は回天搭乗を志願するんだけど、
あの時代の空気の中で苦悩して決断するのが伝わりましたね。
決断した後も、ずっとずっと苦悩してるんだよね。
それが、めちゃめちゃリアルに感じました。

この映画の中ではヒールな役回りの北中尉(伊勢谷友介)。
“軍神”になるために彼は回天を志願したんですが、
貧しい農家の出身の彼にとっては、家族が生きるために、
この道を選ぶしかなかった…そう追い込んだんだろうな…
先日聞いた北上の農民兵士の話しと重なりましたね。

俺がこの映画に入り込んだのは、回天を操縦できるようになる
過程の描き方が、すごく丁寧だったことですね。
今と違ってボタンひとつじゃないんですものね。
俺も並木同様文系の人間なんで、もし回天に載ることになったら、
まず、操縦訓練で脱落しちゃいますね。
あの過程の描き方が、これまでの戦争映画とは違って感じました。

そして一番の肝は、並木の最期です。
特攻の映画だと、主人公が敵にぶつかって玉砕するって、
普通、誰だって思うじゃないですか?でも、違ったんですよ。
並木は回天の故障で出撃せず、潜水艦は基地に帰ります。
そこで次の出撃に向けて訓練を行うんだけど、
並木はこの訓練の途中で亡くなってしまうんです。

糸井重里と吉本隆明の対談集『悪人正機』を思い出しました。
吉本さんは「戦争なんてドラマのようなんかじゃない。
大半は、飢え死にしたり、病気になって死ぬんだよ」
みたいなことを話してたんですけど、並木もそうでした。
特攻の映画で、特攻で死ねず、訓練の途中で死ぬんですから。

この場合、並木って戦死になるのかな…
特攻で死ねば何階級か特進になるんだろうけど…
太平洋戦争の日本の犠牲者は330万人、
非戦闘員の死者は110万人と言われているそうです。
戦闘員って言っても、赤紙で召集された学徒動員や農民兵士も
含んでるんですからね…

終戦までに訓練を受けた回天搭乗員は1,375人、
回天による戦没者は106人、整備士を含め145人だったそうです。
彼らや、並木のような事故で亡くなった人達、
そして複雑な思いを抱えたであろう生存者の方々の思い…
さまざまな思いを感じさせてくれる映画でした。

そうそう、この映画の主題歌は竹内まりやの「返信」で
『DENIM』に入ってるんで、何度も何度も聴いてるんですが、
歌詞に「夕凪」って出てくるんですよね。
今まで意識しないで聴いてたなあ…
みんなどんな思いで夕凪の海を眺めてたのかな…

さて、俺の夏休みの宿題は、もう一単元だな…

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2007年8月12日 (日)

夕凪の街 桜の国

57523582夕凪って言葉をはじめて耳にしたのって、多分、歌だと思います。広島出身の浜省の歌にも出てきますね。夕凪…美しい響きに、夕方にそよぐ風のイメージをもってました。
広島に住んだことのある友達から、夕凪って風が全然吹かないで、真夏の夕凪は暑くてたまらないって聞いてえらく驚きましたね。

そんな夕凪がタイトルに出てくる映画『夕凪の街 桜の国』。
先日、旧友OGNクンがこの映画を観たってコメントもらうまで、
存在もしらなかったんだけど、盛岡で封切の昨日観てきました。
なんの前知識もなく観に行ったんですが、すごくいい映画でしたね。
『夕凪の街』と『桜の国』っていう2編からなって、
2つの物語が糸をつむぐようにからみあっていきます。

俺がまず引き込まれてったのは『夕凪の街』の風景と暮らしですね。
昭和30年代の広島の長屋の風景なんだけど、
昭和40年代の自分の家を見てるようでね…
隣り近所、七輪から立ち上る煙、お見舞い、雨漏り…
物語の本筋とは違うのかもしれないけど、不覚にも入っちゃったね…
昭和を回顧させる映画は最近多いけど、今回はまいったな…(苦笑)

『夕凪の街』は原爆が落ちた…いや、原爆を落とされてから10数年
経った広島が舞台なんですが、描かれてるのは普通の生活です。
普通に仕事して、普通に家族と暮らして、普通に恋心を抱いて…
ただひとつ、普通じゃないのは、被爆者であるということ。
銭湯のシーンがあるんだけど…普通の暮らしの中の普通じゃなさ…
原爆のこと、いろんなとこで学んだはずなのに、戦後20年経って、
平和な北国で生まれ育った俺には、知らないことの方が多いな…

結婚や出産、被爆した人の前にそそり立つ壁の大きさ…
恋焦がれてる人から打ち明けられても、幸せを受け入れられない…
自分も被爆者でありながら、息子が嫁にほしいという娘が被爆者だと
それを受け入れることができない母親…
戦場で戦った死んでいく物語とは違う残酷さを感じましたね。
俺だったらどうするんだろ…そんな問いかけが多い映画でしたね。

『桜の国』は現代の物語なんだけど、戦後は終ってないんだな…
俺なんか、戦争がすっかり風化されてる気がしてるんだけど、
普通の生活の中に戦争による重たい現実が転がってる人達…
たくさんいるんだな…そんなことを痛感させられましたよ。
俺も劇中の堺正章のような旅がしたい…そう感じちゃったな…

『夕凪の街』の麻生久美子、『桜の国』の田中麗奈、
どちらも俺の好きな女優なんだけど、いい演技してたなあ…
戦争映画が苦手な人にもオススメの映画です。
そうそう、この映画の原作って、こうの史代って人の原作の
マンガだったんですね…原作も読んでみなくちゃ。

今まで漠然と広島に行かなくちゃって思ってたんだけど、
この映画を観て、その思いは強くなりましたね。
帰り道、図書館で『原爆被爆者の半世紀/伊東壮』を借りました。
薄い岩波ブックレットなんだけど、俺の知らないことばかりでした。
原子爆弾が落とされた街のことは、そこに行かなくちゃな…
盛岡では体験できない夕凪を、広島で感じてきたいと思います。

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2007年7月11日 (水)

舞妓Haaaan!!!

Wall01_1024_1この数ヶ月、にわかにクドカンづいてしまった俺ですが、
とうとうスクリーンで、クドカン作品を観てしまいました。
ハイ、上映中の『舞妓Haaan!!!』でございます。

観た後で余韻が残るとか…そういう映画ではないんですが、
ハイテンションで楽しめるエンタテイメント作品だと思います。
中村屋でグループ魂を知ってから、阿部サダヲ贔屓の俺でして、
今回も期待を裏切らないハイテンションキャラ全開でしたねえ~。
柴崎コウとの湿っぽくないラブストーリーもよかったです。
でもね、これはあくまで俺の好みなんだけど、
阿部サダヲは脇役の方が絶対いい味出ると思うなあ~。
主役を食っちゃうようなインパクトある脇の方が好きだなあ~。

伊東四朗とか、俺の好きな俳優さんもたくさん出てましたね。
植木等さんのシーンはね…ちょと…ググッときちゃいましたね。
もしかしたら、植木さんの最後の銀幕作品になったのかな…
でもねえ~、この映画を締めたのは、吉行和子さんだと思いますね。
いやあ~、久々に見ましたが…吉行さん、ステキですねえ~。
吉行さんが出てくると、こっちの背筋がピーンと伸びるんですよ。

俺がこの映画を観て、強く強く感じたのは京都への思いですね。
健康な男子ですから、お茶屋で野球拳も憧れますけど…(笑)
何て言うかな…江戸の“粋”とは、また違った京の“粋”…
みちのく育ちの山猿だけに、余計に憧れちゃいますね…
誰か、俺のことお茶屋さんに連れてってくれないかなあ~(笑)

そして、京都といえば…磔磔ですよっ!
今年の元旦、初日の出に年末の磔磔行きの願掛けをした俺…
この映画は「RE2Oはん、京都にお出でやす」って言われてるような
そんな気がして仕方がありませんでしたよ。
るるぶ京都版でも買って、思いを馳せようかなあ~(笑) 

【追記】
携帯でチーズさんの書き込みを読んでたら、
あんまり腹が減ったんで、残業の夜食に買ってきましたよっ!
ジャジャーーーーーーンっ!「あんさんのラーメン」っ!
P7133842映画で重要な役割を果たすラーメンであります。
映画のような大ヒットラーメンになるか、乞うご期待っ!

P7133846

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2007年5月21日 (月)

黒い雨

Photo_24北村和夫さんの訃報が飛び込んでから、何日も経っちゃいましたね。日本を代表する名優の訃報なのに、扱いが小さすぎる気がしました。マスコミの取り上げられ方がの大きさが、その方の大きさとは違うってことは百も承知なんですけどね…なんかね…俺なりの追悼の意味で、北村さんの出演作、今村昌平監督の『黒い雨』のビデオを借りて観ました。

広島の原爆を題材にした『黒い雨』は、20年近くも前の作品で、
レンタルショップで、いつも手にとっては借りずにいた作品です。
戦場を舞台にした映画以上に、重たい何かを感じたんですよねえ…
モノクロの何か象徴的なポスターのパッケージのせいかな…
北村さんの訃報に接しなければ、一生観なかったかもしれないな…

物語の始まりは、昭和20年8月6日。原爆投下の直前の日常です。
その後、原爆が投下され、須子(田中好子)が黒い雨を浴びたり、
重松(北村和夫)シゲ子(市原悦子)夫婦と被爆直後の広島市内を
歩いたり…地獄絵図のような広島が画面に映し出されます。
モノクロなのに、いや、モノクロだからなのかな…
血のような、火のような“赤”を感じましたね…怖かったです…

でも、俺がこの映画に引き込まれたのは、それだけじゃないんです。
須子や重松の家族や、登場人物達が、あまりにも普通なんですよ。
普通って…なんて言えばいいのかな…悲惨な状況の中なんだけど、
思わずクスッて吹き出しちゃうくらい、あまりにも普通なんだよね…
今村監督がすごいのか、北村さんや市原さん達がすごいのか、
いや…両方だろうな…これはねえ、すごい映画ですよっ!

遅ればせながら、昨年、小津監督の『東京物語』を観た時も、
同じような凄さを感じたんですが、この作品もそうでしたね。
『黒い雨』には、三度のメシより噂話が好きそうな、
イキスカナイおばちゃん達が登場するんですよね。
ガキの俺なら絶対許せないタイプなんだけど、40を越えた俺は、
まあ、これぐらい、そこかしこにいるよな…って思えるんですよ。
でもね、その噂が“ピカ”に関してだからヘビーなんだよね。

被爆者って、いつ爆発するかわかんない時限爆弾を抱えてんだね…
楽しい人達が、次々に黒い縁取りの写真に収まってく…
ラスト近く、田中好子が壊れてく場面はね…直視できなかったな…
今村さん、残酷なくらい、美しい映像を撮るんだね…
ラストシーンはね…祈らずにいられなかったですね…

真正面から戦争反対を叫ぶより、よっぽどリアルを感じました。
戦争が終っても、生き残った人は、それを引きずってくんだよね。
引きずりながらも、それぞれの日常を生きなきゃならないんだよね。
東京で空襲にあった親父も、そうなんだよな…きっと…
ガキの頃、親父が戦中の話しをするのを極端に嫌った俺だけど、
…映画から、親父の気持ちを教わったような気がしましたよ。うん。

北村さんの訃報に接したおかげで、この作品に出会えました。
俺が生の北村さんの舞台を観たのは、数えるくらい。
杉村春子さんとの舞台や、北村さん主演の芝居は、
なぜか日が悪く観ることができませんでした。
杉村さん追悼番組のビデオで、今度は舞台の北村さんを観ます。
向こうで舞台仲間と、幕の降りない芝居を演じて下さい。
合掌。

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2007年5月 3日 (木)

マンハッタンラブストーリー

Photo_19 先日、『タイガー&ドラゴン』にはまった話しをしたら、みなさんから『マンハッタンラブストーリー』を薦められました。俺、きっと裏番組の『白い巨塔』を観てたんですね…『マンハッタン…』の存在すら知りませんでした。いかにテレビドラマに興味がないかってことですよねえ~。ここの常連さんがオススメするんであれば、チェックせねばと近所のレンタル屋にいったら…ガーーーンっ!
『マンハッタン…』のDVDが店中どこを
探してもないっ!…と言ってもレンタル中じゃありません。
もともと置いてないのあります…とほほ。

もしかして陽の目を見てない作品なのかな…と、店内を歩いてたら、
ありましたっ!あるにはありましたっ!VHSテープのレンタルでっ!
まあ、この際、贅沢は言ってられません。あるだけ感謝ですっ!
しかし、DVDじゃなくてビデオをレンタルするのっていつ以来~?
っつーわけで、連休前から『マンハッタン…』観出したんですが…

いやあ~~~っ!完全にはまっちゃいましたねえ~っ!
『タイガー&ドラゴン』以上に、はまっちゃったかもお~。
『タイガー…』は落語の世界がベースだし、俺好みなんすよね。
『マンハッタン…』は、ここの方の推薦以外は何の先入観もなく
観出したんだけど…いやあ~~~すげえドツボでしたねえ~。

元来、ラブストーリーものって、そんなに観てるわけじゃなく、
『東京ラブストーリー』とか『ロングバケーション』とか、
何年に一本か観る程度でして…↑ベタな作品だなあ~(苦笑)
だからそんなに大きな期待をしてなかったんですけどねえ~。
いやあ~これはおもしろかったですねえ~。

実は、全話観終わって、返す前に2巡目に入っちゃってですね。
いやあ~クドカンの伏線は最っ高ですねえ~。さりげなさすぎ。
ミステリー小説のように、ついつい遡っちゃいますよお~。
古いアメリカ映画タッチのような画面もいいですねえ~。
あまり上品とは言えないテレビの世界が舞台なんだけど、
なんかねえ~たまらなく愛おしい世界に観えるからマジックだよね。

まるで水戸黄門でも観てるかのような、お決まりシーンもいいよね。
期待を裏切らないように毎回出てくるお待ちかねのシーンの連続。
赤いトレーナーの女や、具が多~いっ!や、再現フィルムや、
コーヒー飲まないキョン×2や、増え続けるメニューや、
黄色いデブの別れ話や、疾走のごとく走り、そして語る店長や、
ファンタジー映画のラストシーンのようなキラキラや…
ベタなんだだけど、毎回、期待以上のベタなんですよねえ~。

AからHまでの登場人物のみなさんも、本当に愛おしいですねえ。
リクオも大好きなキョン×2はもちろんなんですが、
もう一人5行ずつ書きたいくらいにたまらないですねえ~。
ミッチーなんかミッチーのまんまだし…あ、船越もねえ~(笑)
松尾スズキの土井垣のだらしなさが、たまらなかったですけどねえ。

でも、俺が毎回胸キュンだったのは、エンディングの曲をバックに
オールキャストが歌うんだけど、エモやんこと酒井若菜ですねえ~。
彼女のこぶしまわしっぽい歌いっぷりとウィンクにですねえ~、
俺はすっかりヤラレちゃいましたねえ~。
酒井若菜本人や、エモやんは、かわいいな程度なんですけど、
いやあ~エンディングのエモやんに恋に落ちちゃったって感じです。
↑いくつなんだ…俺…?土井垣か…(苦笑)

しかし、TOKIOの歌うエンディングテーマは、素晴らしいですえ~。
俺の知ってるすべての主題歌の中で一番いいんじゃないかな。
って、俺の知ってるすべての主題歌はせまいんですが…(苦笑)
クドカンの詞もなんだけど、マージービートチックなリフと、
メロディーラインがねえ、ドツボ中のツボですよお~。
誤解を恐れずに言えば、俺のバンド時代の世界そのものですよ。
いやあ~連ドラのビデオ借りて、エンディングを毎回飛ばさず
観たのってはじめてかもしれませんねえ~。
あ、エモやんのせいだけじゃないですよお~(笑)

リアルタイムで観てた方には、何を今さらだと思うんですが、
いやあ~すっかり、はまっちゃいましたねえ~。
『軽井沢へようこそ』と『エモやんのお天気コーナー』観たいし、
DVD-BOX、買っちゃおうかなあ~(笑)
しかし、ここの常連さんの審美眼は確かですねえ~。感謝っスっ!
では、第6話Fの回、船越現るの回、観ます~。

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2007年4月20日 (金)

タイガー&ドラゴン

I_0014928thumbnail_pl_4俺が目覚める時って、スズメの鳴き声が聴こえるんですが、昨日はウグイスでしたねえ~。今年、はじめて聴きましたね。最近の盛岡は梅が見頃。梅にウグイス…いやあ~粋ですねえ~。粋と言えばですねえ、最近、粋なもの、粋なことにめっきり出会ってなかった気がするんですが、出会っちゃいましたよっ!クドカン脚本のTVドラマ『タイガー&ドラゴン』っ!

『タイガー&ドラゴン』は、クドカン脚本のTVドラマでありまして、
主演はTOKIOの長瀬智也とV6の岡田准一。主題歌はクレケン。
舞台は浅草。噺家ワールドを見事に描ききったドラマでありまして…
え?何を今さら?…ハイ、そうなんですよね…(苦笑)
このドラマって2年前に大ヒットしてたんですよね。
ほぼ日TVガイドでも連載されてたんだけど、なぜかスルーしてて、
先週末、DVDを借りたら、あまりの面白さにすっかりはまった次第。

いやあ~クドカン作品って、実は始めて観たんだけど、最っ高っ!
中村屋を聴いた時、腹を抱えて笑ったんですが、そのままでしたね。
何がすごいって、古典落語の粋を見事に描いてたんですよね。
舞台は思いっきり現代なんだけど、古典落語が生まれたときを
想像しちゃうような…そんなスピード感があるんですよねえ~。
寄席や、噺家、されを取り巻く人達への愛情を感じたなあ~。

俳優陣も絶妙のキャスティングでねえ~。特にも岡田クンっ!
ジャニーズという色メガネで今まで見てたけど、すごかったっ!
ほんと、粋なんだよねえ~。落語に出てくる遊び人のまんま…(笑)
西田敏行、鶴瓶、阿部サダヲ、猫背椿、蒼井優、尾美としのり…
ほんと、愛すべきキャラクターを演じきってますねえ~。

元来、連ドラって1年に片手の本数を見るか見ないかでして、
たま~~~に今回のようにDVDではまったりするんですが、
三谷脚本の『王様のレストラン』に出会って以来のヒットですね。
最近は仕事と選挙でヘトヘトで、ここの更新も怠ってんだけど、
『タイガー&ドラゴン』が、最高の気分転換になってますねえ~。
まだ、第6話までしか見てないんで、これから後半戦、楽しみです。
タイガー、タイガー、じれっタイガーっ!

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2007年1月17日 (水)

砂の器

Photo_6今年、男子の後厄を迎える私ですが、今まで生きてきた41年間、ジャンルを問わず、名作、名盤、名画といわれる類を、ほとんど通らず過ごして来たなあ…最近、そう思う機会が増えました。せいぜい受験勉強の頃に、あらすじや作者を暗記したくらいでね。映画もそうなんですよねえ~。いわゆる「日本映画100選」「洋画ベストテン」とかに選ばれてる映画ってほとんどと言っていいくらい、観てないんですよね。

何でこんな書き出しかというと、先日『砂の器』を観たんですよ。
それが、あまりにも凄まじく魂を揺さぶる作品だったんですよ。
昨年、丹波哲郎さんが亡くなった時、cocoaさんのブログで、
追悼の意味も込めて『砂の器』の記事があったんですよ。
ジャケ写を見て、いつか観なきゃ…そんな風に感じたんですよね。

丁寧に作られてたんですが、正直、中盤ぐらいまでは退屈でした。
俺が思う、悪い意味での「日本映画」のイメージっていうのかな…
ところが、後半1時間40分を過ぎてからは…凄まじかったです。
これは、小説や、テレビドラマでは描けませんね。
テレビ画面で、これほど魂揺さぶられるんだから、
スクリーンで観たら、俺…どうなっちゃうんだろ…って、感じかな…

この映画には、いくつかの重たいテーマがあると思うんですが、
俺が、まず最初に揺さぶられたのは“父と子”ですね。
本浦千代吉(加藤嘉)は、らい病(ハンセン氏病)のために、
息子の秀夫と故郷の石川県大畑村を追われ放浪の旅に出ます。
この二人の厳しく辛い旅の一端が…ほんの一端なんですが、
「宿命」という曲をバックに、台詞もなく映し出されます。

ほんと…きつかったですね…
あったかい部屋で、パソコンのキーボード打ってる今の俺には、
すぐには現実味を感じない映像のはずなんですが、
あの映像に描かれている“父と子”は“親父と俺”なんですよ。
俺の親父はらい病じゃないし、俺達はあんな旅はしていません。
でもね…あの映画を観て、自分達と重ね合わせてしまうんですよ…

今西警部補(丹波哲郎)が、国立療養所の千代吉を訪ねます。
音楽家として成長した息子(加藤剛)の写真を見せますが、
千代吉は涙ながらに「こんな子は知らない」と叫びます。
らい病のために、我が子と離ればなれにされた千代吉…
ずっと我が子の身を案じ続けた千代吉が「知らない」という辛さ…
これが「宿命」なのですか…だったら、あまりに辛すぎる…

“父と子”の「宿命」って何なのか…
“親父と俺”にも背負ってる「宿命」があるのか…
俺達はどんな「宿命」を背負ってるんだろう…
そんなことを感じずにはいられませんでしたね。
映画を観てから何日か経ってるんですが、いまだに引きずってます。

もうひとつ強く感じたのは“差別と偏見”です。
千代吉親子が放浪の旅をしていた戦前は、
らい病は不治の病で感染すると言われたため、
患者は隔離され、家族を含めてひどい差別を受けたそうです。
数年前にハンセン氏病患者のドキュメンタリー映画を観たんですが、
想像を絶する酷さを感じたのを覚えています。

数年前にホテルの宿泊拒否の問題もあったように、
遠い昔の話しではありません。
らい病だけじゃなく、今でもたくさんの差別と偏見ってあるよね。
毎日テレビで繰り返されるいじめの問題だってそうですよね。
もちろん、俺自身の中にも、差別や偏見は存在してると思う…
そのことにも気づかせてくれる映画だって、俺は感じたな…

他にもたくさん感じたことはあるんだけど、最後にひとつだけ。
千代吉親子が辛い放浪の旅を続けるんだけど、
二人が疲れ果てて歩いている景色の、無情なほどの美しさ…
本当にね…哀しいくらいに美しい風景なんだよね…
生きていくって…なんでこんなにも無様で…
だけど…なんでこんなにも尊いんだろう…
そんなことを重くと問いかけてくる映画でした。

重い話題を軽目に書くっていうのをめざしてるんだけど、
いやあ~やっぱり難しいねえ~(笑)

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2007年1月 2日 (火)

犬神家の一族

Inugamike3毎月1日は映画の日。元旦も映画の日なのであります。ガキの頃は、正月の東映マンガ祭りとか連れてってもらったなあ~。最初に観た映画は、東宝のチャンピオン祭りでしたね。宮崎アニメの原型「パンダコパンダ」も観ましたね。メインはゴジラだったんですが、ドラマで飽きて帰ったという…(苦笑)

というわけで、初めて元旦に映画を観てきました。
正月なんでエンターテイメントが観たくて、「犬神家の一族」を観てきましたっ!
昨年末から俺の中で横溝正史ブームが起きちゃってですね。
考えてみれば、スクリーンで金田一を観るのははじめてでした。

観る前は、すご~く複雑な感じでですね。
昨年末に市川崑の金田一作品を4本まとめて観たんだけど、
30年前の「犬神家の一族」があまりにもインパクトあってですね。
これをどう作り変えるんだろう…って、期待以上に不安でね。
10年前の「八ツ墓村」があまりにも期待はずれだったのが拍車…
市川崑もこれが限界なのかな…とか、思ったりね。
今回は、石坂金田一も出るし…と期待を込めて行きました。

ネタバレもあるんで、これから観る人は気を付けて下さいね。
映画が始まって、犬神佐兵衛が亡くなるモノクロの映像…
スクリーンいっぱいの極太明朝体のキャスト紹介の文字…
美しくも哀しく切ない大野雄二のテーマ音楽…
戦後間もない那須の駅前をを歩く金田一耕介の映像…
どれを取っても、あれ…これって30年前のそのまま?
そう思うような…とても、21世紀に撮ったとは思えない絵なんですよ。

「八ツ墓村」で俺がガッカリしたのは、戦後の色がないんだよね。
キャストとかにも注文はあるけど、それ以上に色が不満だったの。
マンガでいうなら手塚の「奇子」とかね、俺がイメージする、
セピア色に人工で原色を塗りたくって、それが色褪せてきたような、
そんな戦後独特の色があの「八ツ墓村」にはなかったんですよね。
あの色って、今は出せないのかもしれない…そう思ってたけど…

市川昆は、見事に戦後の…俺が求める色を再現してたましたね。
演出も、細かいカット割りも含めて、基本的には30年前のまま。
あれだけオリジナルに忠実に撮った作品って今まであるのかな…
それぐらいに、30年前の空気を再現してましたねえ~。
ミステリーをリピートして観ると本来は楽しみ半減だと思うんけど、
それを補ってありあまる作品に仕上げたと思いますよ、俺は。

さすがに石坂金田一、かなり年食ったけど…(笑)
でも、あの雰囲気は、吾朗ちゃんには出せないもんねえ~(笑)
加藤武の「よし、わかった!」は、しっかりと笑い取ってるし…(笑)
三谷幸喜、木久ちゃん、玉緒さん達も、いい味だしてましたね。
フカキョンも、坂口良子に負けじと好演したと思いますよお~。
前作と違う役で出てたのが草笛光子なんですが、さすがです。
先日亡くなった岸田今日子が演じた盲目の琴の先生…鳥肌でした。

キャスティングで注文つけるとすれば、松島菜々子の珠世かな…
珠世さんの雰囲気はそれなりに出てたと思うけど、でかいっ!(笑)
奥菜恵と向かい合うシーンは、ちっちとサリーかと思っちゃいました。
松子を演じた富司純子。俺、すごく好きな女優さんです。
今回もすごくいい演技してたんですが、根がいい人に見えるんだよ。
前作では高峰三枝子なんですが、彼女のインパクトは強烈すぎっ!
すべてが同じ演出なだけに、どうしても比べちゃうんですよねえ~。
それだけ、高峰三枝子が凄すぎる映画女優だってことなのかな…

そうそう、オーラスは、設定が変わってましたよねえ~。
原作を読んでないからわからないんですが、
俺は前作の駅のホームで終るシーンが好みだったんですけどね。
もしかしたら、市川金田一、石坂金田一は、これで終り…
それを印象付ける後姿だったのかもしれないんですが…
好みではないんだけど、なんかジーンときちゃったんですけどね。

他にも書き足りないことはあるんですが、今日はこの辺で。
誰だ…今年は凝縮して書くって言ってたヤツは…(苦笑)
他の人の感想はいっさい観ないで書いたんですが、
はじめてこの作品で石坂金田一に触れた人はどう感じたんだろ…
今の時代に、この作品はきちんと受け入れられたのかな…
リピーターの感想以上に、気になりましたねえ~。
今年はこの勢いで、映画館でたくさん映画を観たいですね。

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2006年12月26日 (火)

デスノート 前後編

Img_product_32今年も残りわずか。何か書き忘れたことないかなあ~と思ったら…ありましたっ!『デスノート the Last name』を観たんですよお~。今月オープンしたばかりの、新生フォーラムで、オープン初日のレイトショーで相方と観ました。硫黄島2部作のインパクトで、書きそびれておりました。

俺、この映画のこと、全然知らなくてね。
前作の『デスノート』は半年以上も前に
公開になってて、しかも、超話題作だったんですよねえ。
いかに、毎朝、軽部の話しを流して見てるかっていう…(笑)
『リング』とか『着信アリ』ような、怪談モノだと思ってたんです。

たまたま、金曜ロードショーで相方がキャッチして、
「おもしろい」を連発して「誰かからビデオ借りて観なさい」と
言われてですね、同僚から借りて観たんですよお~。
これが結構おもしろくてねえ~、それで続編を観に行ったんですよ。

劇場では、俺達は完全に最年長の部類でしたね…(笑)
前後編ごっちゃにして話しますが、すごく練られたストーリーです。
ほんとね…何手先まで考えてるんだ…こいつら…そう思いましたよ。
日本の作家だと、三谷の脚本の計算の仕方が、俺にはツボで、
「デスノート」は俺のツボとは微妙に違うけど、凄いと思いました。

登場人物では、松山ケンイチ演ずる“L”のインパクトが強烈っ!
原作を見てないからわかんないけど、すごいキャラでしたね。
あの風貌、あの目付き、あの喋り方、あの仕草…
まさしく新世紀の何にも属さないキャラクターですね。
普通、ああいうキャラなら“悪”の側、最終的にそうじゃなくても、
そっちの方の人物として描くのが常套だと思うんだけどね。
お菓子の食いっぷり、携帯の持ち方…脳裏に焼きついてます。

うちの相方は、藤原竜也を絶賛してましたね。
俺、藤原竜也が蜷川に見出されてから、ずっと気に入っててね。
ここ数年の彼の成長っぷりも、すごいと思ってました。
彼の『ロミオとジュリエット』を観逃しのたが悔やまれる~。
今回、彼が演じた“夜”も、すごいキャラでしたね。
彼がデスノートを手にしたために、変わっていったのか…
それとも、彼の潜在意識の中に“魔”が潜んでいたのか…

すごくよくできた映画だと思ったし、入り込んで観たんだけど、
観終わった後…“リアルを感じないリアル”っていうのかな…
感じたことのない感覚を覚えたな…
この映画って、やたら人が死ぬんだけど、ひとつひとつの死って、
すごく軽く描いてるんですよね。血を感じないっていうのかな…
翌日『硫黄島からの手紙』を観たから、余計にギャップを感じたな。

人の命の重さとか、生死のギリギリの感じとか、
そういうのは『硫黄島からの手紙』は、すごかったんですよね。
まるで61年前の硫黄島に自分がいるような感じがしたりね。
『デスノート』の死はね…そう、まるでゲームのような感じなんだ。
だから血が流れても、全然、痛みとか苦しみを感じないんだよね。
でもね…そんなゲームのような『デスノート』の世界って、
毎日、テレビから流れてくるリアルなニュースそのものなんだよ…

決して好きなジャンルの作品ではないはずなんだけど、
この時代を見事に切り取った作品なんだ…そんなことを感じたな…
来年は“L”を主人公にした映画も公開されるそうです。
さて、今年の後半は映画づいてますが、まだ観たいのがあります。
正月休みにゆっくり観れるといいなあ~。 

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2006年12月14日 (木)

父親たちの星条旗

Fof011『硫黄島からの手紙』を観た後、車で1時間ちょい南下して、北上のワーナー・マイカル・シネマで『父親たちの星条旗』を観てきました。こちらの方が先に封切られていたんですが、なかなか行けずにいたら、いつの間にか盛岡での上映は終り。県内では北上だけで、夜一回のみの上映。しかも、今週の金曜で終わり。うわあ~っ!今日しかないじゃんっ!ってわけで何年ぶりかの映画のハシゴ。しかも長距離移動で、硫黄島二部作を観たのであります。

どちらの映画も舞台は同じ昭和20年の硫黄島なんですが、
アプローチが全然違うんですよね。
前情報をシャットアウトしてたんですが、この展開は意外でした。
『硫黄島からの手紙』は、リアルタイムの硫黄島を描いてました。
回想シーンもはさんでますが、メインの舞台は硫黄島の戦い。

『父親たちの星条旗』は、まるでドキュメンタリーのようなんですよね。
硫黄島のたたかいから帰国した“英雄”たちのその後と、
硫黄島で戦った父親の息子たちの時代がメインなんですよ。
フラッシュバックするように、硫黄島の戦いが描かれてます。
すごく俯瞰してるような…逆に忘れたくても忘れられない…
目の裏に焼き付けられた強烈な“何か”として硫黄島が登場します。

なんかねえ、戦争という舞台で担ぎ上げられる人たちって、
自分の意思とは別のとこで“英雄”にされちゃうんですね…
戦争じゃなくても、似たようなことって、いくらでもあるよな…
“戦場”って“現場”から離れた“場所”にいる人の温度差も感じたな。
戦火の中じゃなくても、現場と外野の温度差ってあるんだから、
過酷な戦火の中での温度差が、あんな悲劇を生むんだろうな…
そんなことを思ったりしましたね。

『硫黄島からの手紙』以上に、人間を描いてたかもしれません。
ただね、これは俺の失敗なんだけど、この凄まじい映画を
同日にハシゴすべきではないですね。あまりにヘビーでした。
映画の内容だけじゃなくて、自分の心身と感受性にとってね。
少し時間を置いて、もう一度観たい…そう思いました。

今日、教育基本法が参議院で通ってしまいました。
二宮くん演ずる西郷の家に赤紙が届いたシーンがよみがえります。
「ただのパン屋」が戦場にかりだされる時代が近づいてるのかな…

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