11月2日の盛岡の朝は、すごく冷え込んだんですよ。
早く仕事を上がるために、6時台には家を出たんですけど、
車のフロントガラス…朝露で濡れてるかと思ったら、
なんと霜がギッシリ…初霜の朝だったんです。
最低気温が氷点下0になりました。
寒い分、すごく天気もよくてね…そんな日のライブでした。
前の日に…いや、前の日にはじまった話しじゃないんだけど、
かなりヘビーな出来事があって…
ライブに行けるかもわからなかったんだよね。
いや、物理的にはライブに行けても、
ライブに行って自分が楽しめる状況かわからなかったんです。
そんな心境を…この日の冷えた青空が救ってくれた気がしました。
いつもならライブの何日か前からテンションがあがるんだけど、
今回はね…ほんと…職場を出るまではそんな気になれなくてね…
でも、会館裏のツアートラックを見たあたりから、
すごく自然にライブに入っていけるテンションになってきて。
3階席の何も遮るものがないポジションも手伝って、
いつものように…いや、いつも以上にライブに入り込めました。
ライブの中盤、「君に会うまでは」「散歩道」の
アコースティックセット…すごくよかったですよ。
その後、70年代初期の映像をバックに、福ちゃんの語り…(笑)
「ON THE ROAD'88」の「戦士の週末」を髣髴させるような
バーのセットと、浜省の小芝居をはさんでの「路地裏の少年」。
そして、この後の一曲が、間違いなく俺のハイライトでした。
「生まれたところを遠く離れて」
ファーストアルバムに収められてるナンバーです。
ファーストは76年。音も歌も演奏も重たくてね。
何年も聴いてなかったんだけど、何年前だろ…
拓郎の「イメージの詩」をカバーしたシングルの
カップリングでリメイドされたテイクで久々に聴きましたね。
コジやんのピアノをフューチャーした、ブルーズなテイクでね。
すごくよく生まれ変わってたんだけど、
この楽曲そのものが持つ“重さ”には変わりなかったんですよね。
ベストにも収められてるし、浜省にとって大事な曲ってのも
わかるんだけど、いつ聴いても長いな…なんて思ってたんですよ。
でもね…この夜はねえ…この曲…あっという間だったんですよ。
ほんと…こうやって書いてるだけで、鳥肌たってきます…
その理由って、俺にはふたつあるんですよね。
ひとつは、バックのスクリーンに映し出される映像。
浜省の幼い頃の写真と、彼が育ってきた時代の写真が、
時代に沿ってスライドのように映し出されていきます。
先月、渋谷AXでのCHABOのライブも似たような構成でしたが。
はじめはね…ほんと…歌のバックの映像として映ってたんですよ。
幼い頃の写真から、愛奴、ソロでデビューしてた写真になり、
やがて70年後半から80年代の写真に移り変わっていきました。
長い曲にあわせてなんで、ほんと一年一年を何枚もの写真で
ゆっくりと、ゆっくりと、ふりかえっていきます。
そこに映し出された写真は、どれも俺が知ってるものなんだよね…
「GB」とか「ミュージック・ステディ」とか「ブリッジ」とか、
最近は買わなくなったけどコンサートパンフとか、
レコードのジャケットとかで見て来た写真だったんだよね。
雑誌を切り取ってクリアケースに入れてた写真もあったり、
部屋にポスターで貼ってたようなやつもあったり。
浜田省吾を…どれだけ自分が好きで聴いてきたか…
どれだけ聴きこんで…“だんぜん、浜田省吾だった”か…
それを改めて思い出させるような時間になりましたね。
はじめて「HOME BOUND」を聴いて稲妻が走った16の冬…
新調したイクシーズのブルゾンで挑んだ初めてのライブは83年…
ひとりきりで立ち上がって「家路」を聴いた85年…
俺にとって一度きりの野外ライブ、91年のみちのく湖畔公園…
センターステージに喚起した「ON THE ROAD 2001」…
俺、浜省から遠く離れてたな…
そんな風に思ってた頃もあったんだけど、そんなことはなかったね。
いつも、浜省を聴いてたんだ…改めてそんな風に思いましたね。
浜省の切抜きを下敷きにはさんでた“あの頃の僕”は、
今でも“夢中で追いかけて”て、こうして書き殴ってるんだもんね…
そんな自分の“MY FIRST LOVE”と向かい合う時間でしたね。
もうひとつは、俺の親父のこと。
「生まれたところを遠く離れて」を歌う前に、
「自分の両親にあてた歌です」って、確か言ったと思うんだ…
俺が、この曲を遠ざけてた理由って、そのことなんだろうな…
「DARKNESS IN THE HEART」を、あまり聴かなかったのも、
きっと…俺と親父の“距離”とだぶるからなんだろうな…
俺がライブに行けるかわからなかったのも、親父のことなんだけど…
ここでは詳しくは書かないけど、ごく私的な自分の想いが、
この日、この曲と、見事にリンクしちゃったんだよね…
“親父も16の時から 働いて 働いて 働いてきたけど”
そんな歌詞があるんだけど、自分の親父と見事に重なるんだよね。
東京で空襲にあって…ほんと…命からがらだったと思う…
それからも、高度成長の時代の波に乗れなかったのか、
それとも乗らなかったのか…時代をまったく無視した生き方…
ほんと…不器用な生き方で、俺を育ててくれて…
貧しい暮らしだったけど…恥じることなく受け入れられたのは、
親父…あんたの不器用なまでの、誇り高い生き様を…
そんな親父の背中を見て生きてきたからなんだと思うよ。
でもな…この時代の中で…居場所を探せずにいるあんた…
「静かに暮らすいらつき」を誰よりも感じてるはずの親父…
そんな親父のことがね…やっぱり、だぶったんだよね…
今回の「ON THE ROAD 2006-2007」を思い出す時、
間違いなくこの「生まれたところを遠く離れて」が…
その時によぎった想いが…フラッシュバックするんだろうな…
「A PLACE IN THE SUN」「初恋」「家路」「ラストダンス」…
ほんとに…忘れられない…特別な一夜になりました。
浜省とバンドとスタッフに…心の底から感謝ですね。
Thank you !
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